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2009.12.1
 
 


松茸の話…

 高松の この峰も狭に 笠立てて 満ち盛りたる 秋の香のよさ
    「詠芳」 [万葉集巻十2233](1)
    この感覚は京都というより奈良がピッタリだが

← イラスト by (C) 素材屋じゅん

 先月、京都の錦で八百屋を覗いたら美しいさわらの葉に敷かれた丹波産の松茸が売られていた。傘が開ききっていない大きな上物一本が箱に入って\50.000也。
 それなりに日当たりが良い赤松林にしか育たないから日本ではほとんど採れないのだから致し方なかろう。
 里山を復活させて楽しめたらよさそうにも思うが、この価格では、松茸発見と聞けば、さっそく盗掘者が大挙しておしかけ荒らされるのがせきのやま。

 東京のスーパーでは、手が届くお値段のものが並ぶが、時代の変遷を感じる。
 最初の頃は韓国産だった。そのうちカナダ産が目につくようになり、今はもっぱら中国。
 と思っていたら、中国産は人気薄だとか。農薬問題が尾を引いているのだろうか。確かに、傘が開いていたりして質はどうも今一歩。安価なものが多い感じがする。

 そこに目をつけたのか、大盛り特売品が出回るようになったようだ。トルコ産。
 実は、おつきあいで、松茸と鱧の鍋なるものを京都のホテルで食べたのだが、多分、このトルコ産では。日本の松茸と同じものかは気になるところだが、見かけはほとんど変わらない。
 感想から言えば、土瓶蒸しが一番。

 それにしても、不思議な食材である。普通は、輸入品価格に引きずられて、国産価格は下がるものだが、逆に上がるのである。
 上物は確かに香りからして違うのだろうが、そんなものはほんの一部なのでは。

 ただ、松茸の香りを楽しみたいだけなら、「マツタケエッセンス」を利用する手がある。その気になれば時期を選ばずいつでもできるが、滅多に試す人はいないようだ。
 と思ったら、そうでもなさそうだ。(2)簡単に入手できるのだから、さもありなん。
 エリンギならなかなかとか。中国ではアワビ風味で喜ばれる茸だが、それもありか。
   → 「Eryngii」  [2009.10.27 ]

 それよりは、“あの匂いで、子供の頃の、「今日はマツタケよー」という家族のハイテンションっぷりを思い出す”ことで喜びを味わうというのが正解か。

 --- 参照 ---
(1) http://etext.lib.virginia.edu/japanese/manyoshu/Man10Yo.html#2233
(2) 大塚幸代: “偽装マツタケに挑戦” Daily Portal@nifty [2006/11/08]
   http://portal.nifty.com/2006/11/08/a/
(まつたけのイラスト) (C) 素材屋じゅん http://park18.wakwak.com/~osyare/index.html


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