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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.6.17] ■■■
[347] 悪報[2:殺馬罰]
🐎牛転生[→]とくれば、次は馬だろう。

馬も牛と同じように力仕事をするものの、寺とは係りが薄いようだ。
ということで、その辺りのグループも眺めよう。

  【本朝仏法部】巻二十本朝 付仏法(天狗・狐・蛇 冥界の往還 因果応報)
《_1〜14天狗》
《15〜19冥界》
《20〜40悪報:転生現報》
  [巻二十#20] 延興寺僧恵勝依悪業受牛身🐄
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」上20僧用涌湯之分薪而与他作牛役之示奇表
  [巻二十#21] 武蔵国大伴赤麿依悪業受牛身🐄
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」中9用寺物作牛役
  [巻二十#22] 紀伊国名草郡人造悪業受牛身🐄
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」中32貸用寺息利酒不償死作牛役之償債
  [巻二十#23] 比叡山横川僧受小蛇身🐍📖源信物語 [4:気になる小瓶]
  [巻二十#24] 奈良馬庭山寺僧依邪見受蛇身🐍📖馬庭山寺
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」中38因貪成大蛇
  [巻二十#25] 古京人打乞食感現報📖四国辺地
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」上15悪人逼乞食僧而現得悪報
  [巻二十#26] 白髪部猪麿打破乞食鉢感現報📖四国辺地
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」上29邪見打破乞食沙弥鉢以現得悪死報
  [巻二十#27] 長屋親王罸沙弥感現報📖疫病神の伴善男
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」中1恃高徳刑沙弥現悪死
  [巻二十#28] 大和国人捕菟感現報🐇
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」上16無慈心剥生兔皮而得現悪報
  [巻二十#29] 河内国人殺馬得現報🐎
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」上21無慈心而馬負重駄以現得悪報
  [巻二十#30] 和泉国人焼食鳥卵得現報🐔📖鶏卵食の仏罰
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」中10鳥卵煮以得悪死
  [巻二十#31] 大和国人為母依不孝 得現報
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」上23凶人不孝養嫡房母以現得悪死報
  [巻二十#32] 古京女為母依不孝感現報
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」上24凶女不孝養所生母以現得悪死報
  [巻二十#33] 吉志火麿擬殺母得現報
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」中3悪逆子愛妻将殺母謀現報被悪死縁
  [巻二十#34] 出雲寺別当浄覚父成鯰肉得現報忽死🙏🐟📖出雲路の鯰汁寺
  [巻二十#35] 比叡山僧心懐依嫉妬感現報🙏
  [巻二十#36] 河内守依慳貪感現報
  [巻二十#37] 耽財娘為鬼被👹📖初夜の人喰い鬼
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」中33女人悪鬼見點攸食縁
  [巻二十#38] 石川沙弥造悪業得現報🙏
  ⇒「日本国現報善悪霊異記」上27邪見假名沙弥斫塔木得悪報
  [巻二十#39] 清滝河奥聖人成慢🙏
  [巻二十#40] 義紹院不知化人被返施📖泉川原の消えた乞食
《41〜46他》

"荷馬を殺戮した報い。"としては、来世、重い荷を背おわされて地獄で何度も殺される苦しみを味わうことになるというのが、普通な感じがするが、ここでは現世で結果がでる。愚か者は肉眼を失うという報い。
馬が流す涙も見えないような輩に目は不要ということか。

㉙ 🐎【現報】
 河内に住む石別は瓜販売が生業。
 そこで、馬に瓜を背負わせ売りに行っていた。
 しかし、馬の力で耐えきれぬほど背負わせたので
 馬は歩まずに立ち尽くす。
 石別は、大いに嗔り、馬を打って、尚も重荷を背負わせた。
 馬は二つの目から涙を流し悲し気な様子を見せるのだが
 石別には哀れむ心は無いので、追い打つだけ。
 行商で瓜を売り尽くしても、
 嗔恚の気分は止まらないので、その馬を殺してしまった。
 この様にして、度々、馬を殺すことに。
 その後、我が家で釜に湯を沸していた時のこと
 石別、釜の辺にいくと、
 二つの眼が突然抜けて釜の中に入って煮えてしまった。
 歎き悲しんだが、どうにもならない。
  「此れ、偏に、度々馬を殺せる咎に依て、現報を感ぜる。」と、
 人々は、皆、そう言って、謗しったのである。


もちろん、他の動物の殺生も、同様に殺戮罰を受けることになる。

ただ、このように書くと、西洋的に神から悪行の罰を受けるイメージが被さりかねないので要注意だ。
仏教では、仏様が直接罰することはなく、仏法としての因果律で、悪行の結果としてその当人が報いを受けることを、仏罰と呼んでいるだけ。仏は、悪行をさせないようにするとか、善行に導く役割を果たしているにすぎない。
あくまでも、全てを貫く、仏法によって生じる結果の一つが"罰"。

㉘ 🐇【現報】
 心猛く、長らく哀びの心も無く、昼夜にかかわらず
 殺戮を生業としていた、大和の住人がいた。
 ある時、野に出て菟を捕えた。
 そして、生き乍らにして、その皮を剥ぎ、身体を野に放棄した。
 その後、それほど時を経ずして、
 毒の瘡が全身に広がり、皮膚が乱れ爛れてしまい、
 際限なきほど痛み悲しむ事態に。
 医師を呼んで、薬で治療したが、さっぱり効果無く、
 日が経ち、遂に死んでしまった。
  「此れ他の事に非ず。
   彼の菟を殺せるに依て、現報を蒙る也。」と、
 人々は、皆、言い謗しったのである。


グループとしては違うが、牛を殺したので、地獄に堕ちる話もこの巻に収録されている。
《16〜19冥界》🐄
  [巻二十#15]摂津国殺牛人依放生力従冥途
 摂津東生の郡撫凹村の富者が死んで9日目に蘇生。
 閻羅王宮で、生前に神への供犠で毎年殺した7頭の牛に責められた。
 しかし、それは、効果はなかったが、病の治療を求めてのこと。
 しかも、月毎の六節日に欠かさず戒を受けていたし
 使いを出して放生も行っていた。
 そのため、1千万余りの放生で救われた生き物が護ってくれた。

現代の裁判で言えば、"閻魔王裁判長、情状酌量の裁定を下す。"ですな。

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