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■■■ 「古事記」解釈 [2024.4.8] ■■■
[853]読み方[23]
「水鏡」の一瞥をお勧めしているのは、「古事記」に触れていると、それなりの気付きが得られるから。
その3つ目。・・・

「水鏡」では、天皇の暴虐性が明快に記述してある点。

さらっと読んでしまえば、それはそうだろうと、単純に納得しがちだが、「古事記」を神統譜・皇統譜としてしっかりと読みこんでいこうとの姿勢で対処していれば、そうはなるまい。

ここは、太安万侶からすれば、最重要な天皇段だったかも知れぬと思い始めること必定。
複雑な政治状況下で、天皇の権力を圧倒的な高みに引き上げるべく全精力を傾けた偉大な天皇像が見えてくるからだ。
   📖大悪有徳天皇の魅力を余す所なく記載

㊦🈭㉑大長谷若建命/雄略天皇を、「水鏡」は、"大惡天皇"とされている、と以下の如くに記載。もちろん、「古事記」にその様な話は無い。・・・
  「御心猛くして多くの人を殺し給ひき。」
  「愛せさせ給ひし女こと、男にあひにけり。
   帝、怒り給ひて、男女二人ながら召し寄せて、
   四の肢を木の上に張りつけて、
   火をつけて燒き殺し給ひてき。」

直情型で、不快なことあらば烈火のごとく怒り、すぐに殺害を命じたのだろう、との印象を与える書き方になっている。

「古事記」のこの段は緻密な構造設計になっており、直情型か否かは実はどうでもよいこと。㊀長谷朝倉宮と㊈御陵を除けば、大和の中央政治に於ける、天皇の絶対主権構造樹立譚に仕上がっていることがわかる。
【志幾】㊁志幾之大縣主
【三諸】㊂引田部赤猪子
【吉野】㊃幸行吉野宮 ㊄幸阿岐豆野
【葛城】㊅葛城之一言主大~
【春日】㊆袁杼比賣
【伊勢國】㊇伊勢國之三重婇
言うまでもないが、すべてが歌の世界でも表現されており、多くは神婚的風情を感じさせるものに仕上がっている。

「水鏡」著者もその辺りは十分にわかっていたようで、≪この帝、生れ給ひし時、宮の內なむ光りたりし。≫として、この天皇の本質を指摘することを忘れていない。
・・・「古事記」では、㉑大長谷若建命/雄略天皇の暴虐性発揮譚と呼べそうな譚は、⑳[御子]穴穗御子/安康天皇の段に収録されている。→続


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