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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.11.8 ■■■

燕伝説

「卷十六 廣動植之一 羽篇」と「續集卷四 貶誤」に所収されている燕話をした。
  "羽 (色々) 【燕】" "「家燕」の貶誤"

その補遺的内容が「續集卷八 支動」にあるので触れておこう。・・・

燕,齊魯之間謂燕為乙,
避戊巳。
《玄中記》雲:
 “千之燕,戸北向。”
《述異要》雲:
 “五百燕,生胡髯。”


「爾雅」釋鳥の晉 郭璞注記に"詩云燕燕于飛,齊人呼。"との文章が残っているが、「」は燕の古名で音は"乙"との由。中原古族の言葉であり、それが南語に残っているということらしい。殷の聖なる玄鳥(元鳥)としての歴史が流れている訳だ。

明代の書、彭大翼:「山堂肆考」卷二百十五 燕には、伝説として残っているポイントが記載されているが、冒頭のパラグラフから"其巣有戸北向"が入っており、極めて有名なのがわかる。そして、もちろん玄鳥の"遺卵"の紹介から始まる、知戊巳及び避者と生髯も収載されている。極めてポピュラーな話であると言って間違いないだろう。

ここの今村注も素晴らしい。指摘している詩を引いておこう。・・・
  「禽虫十二章 其一」  白居易
[序]
庄列寓言,風騷比興,多假虫鳥,以為筌蹄。
故詩義始于關雎、鵲巣;
道説先乎鯤、鵬、蜩、之類,是也。
予闍序ゥ興,偶作一十二章,頗類志怪放言,毎章可致一哂。
一哂之外,亦有以自警其衰耄封執之惑焉。
頃如此作,多与故人微之、夢得共之。
微之、夢得嘗雲:
 「此乃九奏中新声,八珍中異味也。」
有旨哉,有旨哉。
今則独吟,想二君在目,能無恨乎。

 燕違戊己鵲避,茲事因何羽族知。
 疑有鳳凰頒鳥,一時一日不参差。

 燕の巣作りは常に戊己の日を避ける。
 鵲は巣の入口として常に太歳の方角を避ける。
 どうしてそんなことが羽類動物に分かるのだろうか。
 鳥の王たる鳳凰が鳥歴を頒布しているかとも思ってしまう。
 これは経験則として、皆信じているようだが。


これに応えるが如く、"燕君達は、よりにもよって、当の戊の日に巣を葺き綴るのだゼ"との詩も登場。
論争をしている訳ではなく、白居易の才を最初に見抜いた人物が、その真意を見抜いて作ったと見てよいだろう。
(無名の若造が、高名な詩人を訪問。その名前が"白価にて居易し"であることを見て、どうせ食えないゾということで「長安百物貴,居大何易」と。しかし、詩を見て、一変し、「有句如此,居天下何難!」と。
冗談半分の出来レース的展開を愉しんでいる訳だ。)

詩はコレ。・・・
  「上古之什補亡訓傳十三章 其八 燕於巣」 唐 顧况[727-814年]
 (燕於巣,審日辰也,燕不以甲乙銜泥。)
燕燕於巣,綴葺維戊。甲兮乙兮,不宜有謬。
飛龍在天,雲掩於鬥。曷日於雨,乃曰庚午。
彼日之差,亦孔斯醜。昔在羲和,湎淫不修。
我筮我龜,莫我告。胤乃之,彝倫九疇。
君子授律,是.三五不備,罔克攸遂。
惠此蒸人,毋廢爾事。爾莫我從,維來者是冀。


「山堂肆考」の冒頭では、"尾倔而色白者是數百"とも記載しており、玄鳥を特別視することが当たり前だったようである。
おそらく、それが中華帝国の臍の緒ということなのだろう。

(参照) 「鳥與史料 燕科」Fonghuanggu Bird and Ecology Park, National Museum of Natural Science, Taiwan
(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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