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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.11.17 ■■■

ヤドカリ補足


ヤドカリの追記。[→]・・・

寄居之蟲,
如螺而有,形似蜘蛛,
本無殼,入空螺殼中載以行。
觸之縮足,如螺閉戸也。
火炙之,乃出走,
始知其寄居也。

寄居虫/宿借/Hermit crabは巻貝/螺[=腹足]の如し。
しかし、脚がある。
そう思って眺めると、形状は蜘蛛に似ている。
もともと殻は無い。
空である巻貝の殻の中に載って、
それから入り込んで行く。
これに触れると足を縮め、
巻貝と同じで入口の扉を閉める。
火でこれを炙ると、すぐに、殻から走り出ていく。
そこで、
始めてこの貝は宿借だったとわかるのである。


前集では寄居"蟹"として登場したが、ここでは寄居之"蟲"と呼んでいる。確かに、蟹の生態とはかなり違うから、別の名称にした方がよさそうである。

滅多に見ることができない宿を探すところを観察したので、追記したくなったのだろう。

そうなのである。先ずは、貝殻に載って自分の鋏脚を入口に合わせて、丁度よさそうな大きさと判断すれば宿替えするのである。それは知っていれば当たり前の話だが、自明とは言えない。扉とは自分の鋏脚であることも、教えてもらわないとわかるまい。

思わず笑ってしまうのは、炙ってみるとどういう反応を示すか試してみたこと。ソリャ、危険ではあるが、貝のように焼け死ぬよりは、裸になって逃げだすだろう。

現代では宿借はペットとして売られているから、その気になれば飼うことができるが、成式は家人が郷土から戻ってくる時に持ってこさせたに違いない。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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