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2002.12.11
 
 


高速道路事業問題の根…

 高速道路事業の高コスト体質を批判する経営者が増えている。一見、改革派に映るが、腐敗や、赤字の垂れ流しを止めよ、との発言にすぎない。根底の思想は、高速道路建設続行派と同じである。

 インフラ産業は低価格サービス提供を追求すべし、との意見を持つ人は未だに少数派だ。これでは、日本の産業競争力弱体化は続く。

 電力/通信/交通といったサービスが高価格なら、それだけでもコストのハンディキャプで国際競争力は落ちる。しかし、それ以上に問題なのは、このような基盤産業が新技術開発の桎梏となっている点である。

 高速道路へのETC導入は典型である。技術振興を兼ねて高額投資はするが、新技術利用のメリットが出るように現状の仕組みを変えようとはしない。従って、機器/設備メーカー側に、新機能開発や新システム提供のインセンティブが生まれない。
 メーカーは研究開発のスキルを磨けないから、自動的に競争力を失う。

 電気通信産業でも同じことがおきている。こちらは、深刻である。

 メーカーでもないのに、インフラサービス企業が膨大な収益を研究開発に注ぎ込むからだ。
 当然、機器/設備メーカーと重複した研究開発活動になる。しかし、問題は、この無駄ではない。時代に合わなくなっている体制を変えようとしない点にある。
 現行の仕組みは、すべてのメーカーがインフラ側の方針に合わせて動く構造だ。常に、インフラ企業の技術を用いた共同開発が要求される。メーカー側が独自性を発揮できるのはマイナーな提案だけで、独自の戦略展開は不可能だ。
 このことは、インフラ側が技術展開方針を誤まると、全メーカーが沈没することを意味する。

 このようなことを防ぐためには、インフラとメーカーは完全分離するしかない。
 メーカーが革新的技術を提起したら、インフラ側が柔軟に対応して、いつでも導入できる体制を敷くべきなのだ。両者が一体化した閉鎖的な産業構造は、技術革新の時代に対応できないのである。
 産業競争力を高めるためには、先端技術を研究はするが産業構造変化を極力避ける現行の体制からの脱皮が不可欠なのだ。高速道路のETCと全く同じ体質では、ハイテク産業では敗退するしかあるまい。

 すでに、日本のケータイメーカーは、製品価格の決定権はおろか、技術政策の発言権さえ与えられないようだ。
 次世代携帯のライセンス方針発表を見れば、誰でも、欧州との違いに驚く。同意したメンバーは、通信インフラ企業、NTTドコモと、欧州の通信機器メーカー、エリクソン、シーメンス、ノキアだけである。必須特許を保有するソニー、日本電気、富士通、松下通信工業、三菱電機の5社は当事者と認められていないのである。「この合意内容へ賛同」するだけの役割らしい。日本では、インフラ企業がすべてを取り仕切るのである。(http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/02/whatnew1106b.html)

 「写メール」の成功で、こうした仕組みの弊害がついに表面化した。新規メーカーの参入も認めず、メーカー側に工夫の余地も与えない体制の欠陥が歴然としたからだ。

 米国では、インフラ側のAT&Tから、ベル研を含む、内部のメーカー機能を分離させた。そして、世界に冠たるハイテクメーカーが誕生した。当然ながら、短期間で世界のリーディングメーカーに育つ。
 本来は、このような動きを促進させることが、競争政策なのだ。

 日本の競争政策の議論には、このような視点は皆無だ。産業構造を壊すから、タブーなのである。


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