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2003.1.20
 
 


強硬な米国政府…

 戦争前夜の緊迫感が溢れたタイミングを見計らうように、2003年1月17日、TIME誌が「Blaming America」特集を組んだ。憎しみの視線を浴び始めていることを、米国民に理解させようとのメディアの意志を示したといえよう。 (http://www.time.com/time/europe/magazine/2003/0120/cover/story.html)

 サダム・フセイン政権潰しに湧く米国で、主要メディアがここまで踏み込んだ特集を組んだきっかけは、「Why Do People Hate America」(Ziauddin Sardar, Merryl Wyn Davies著, Icon Books, 2002) の影響といえよう。欧州/米国間の亀裂発生の可能性を、本気になって心配し始めたのだろう。
 この本は、2002年7月に刊行され、英国でベストセラーになった。米国政府が他国の事情を全く勘案せず、独自観の国際秩序作りを強行した実例をまとめたものだ。著者は米国に住んでいた英国人で、うち1人はイスラム教徒だ。(http://www.iconbooks.co.uk/book.cfm?isbn=1-84046-383-X)

 こうした状況については、米国務省はメディアより早くから認識していたと思われる。9月にU.S. Advisory Commission on Public Diplomacyが会議を開催しており、米国の動きが海外へどのような影響を与えているかの検討が行われている。2002年報告書においても、米国へのネガティブメッセージが広がっており、米国の方針が海外に上手く伝わっていないとの認識を示している。その上で、対処策として「Listen」をあげた。米国政治家でさえ、政府が海外の意見を聞かない状況を問題視している。耳をかさないことが、唯我独尊に映る原因と見ているのだろう。(http://www.state.gov/documents/organization/13622.pdf)

 しかし、耳を傾け相手の実情を理解する行動が始まったからといって、実際に意見を取り入れて姿勢是正に動くとは限らない。しかも耳を傾ける必要性があるともいえないから、変化はあるまい。
 有権者たる米国民は、もともと海外に対して興味を持たない人達が多く、知識も少ない。といって、無知を指摘されるのは誰でも気分が悪い。従って、どうしても海外問題の議論を避ける傾向がある。
 こうした文化土壌で、海外の意見を取り入れる必要がない分野が存在する。軍事である。イラクやアフガンで、比類なき力量が実証されており、安全保障に関して、わざわざ他国の意向を思料するとは考えにくい。
 しかも、ブッシュ政権の基本政策は軍事産業振興型である。国内経済刺激効果が高いし、ハイテク支援にもつながるので、さらなる軍事力強化に動くのは間違いあるまい。こうした軍事方針に関して、海外の意見を聞くとは思えない。
 従って、唯我独尊姿勢は継続することになる。

 この流れの典型が、2002年12月17日にブッシュ大統領が発表した、新しいミサイル防衛構想だ。地上迎撃、海上迎撃、新型パトリオット(PAC-3) 、陸海宇宙の情報センサーを2004-2005年に配備するという。(http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/americas/2584487.stm)
 イラク問題に報道が向かうため、余り注目されていないが、時代を画す動きが始まったといえる。
 世界中(地上、海上、宇宙)に情報網を張り巡らし、完璧な監視体制を構築するのだ。現状の技術だけでは、簡単に実現しかねるから、最先端のIT技術の開発・投入を進めることになろう。当然のことながら、超巨大プロジェクトになる。名称は防衛網だが、実質的には、世界中で常時偵察行動を行い、問題発生前に即時攻撃できる仕組みに他ならない。
 これがテロとの戦いの根幹である。従って、実質的には、米国軍事力による世界制覇と同義とも言える。

 反対する人もいるが、この流れを止めることはできまい。
 従って、この流れから生ずる矛盾がどこで噴出すか、その矛盾から被る被害どのようにしたら少なくできるか、を考えることが重要だろう。そして、ここから生まれる新技術が、どのような影響を与えるかも考えておく必要があろう。


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