← トップ頁へ

2004.6.24

   中小企業政策の抜本的見直し必至

無方針な中小企業育成…

 日本型地域クラスター形成について、批判的な話しをした。
  → 「地域発展策の欠点」 (2004年6月23日)

 実は、こうした批判は表層的なもので、余り意味はない。問題は根深いのである。

 日本の中小企業政策が無方針だから、どのような政策を打ち出しても、評価できない、というのが実情なのである。

 ・・・と言うと、驚く人が多いかもしれない。法律も整備されているし、様々な施策が次々と登場しているからだ。各政策の効果はともかく、明確な方針あり、と感じている人が多いと思う。
 しかし、おそらく、これは間違いである。

 そもそも、政府が用いている「中小企業」という言葉に問題が隠されている。この言葉は、産業の実態を反映しなくなっているのに、変えようとしない点が問題なのである。
 中小企業には様々なタイプがある。これを一括りにして議論しても、意味は薄いのだ。

 このことは、怠慢というより、どうしてよいのか、わからないからだと思われる。

 何が問題か、簡単にまとめておこう。
 1 大企業の資本が入っていている企業と、独立性の高い企業を一括して意味があるのか。
 2 中国企業活用が始まった上、パートタイマー/派遣が増えている時代に、従業員数に意味があるのか。
 3 全く異なる業態や、目的が異なるものが入りすぎているのではないだろうか。
   ・クラフツマン主体の企業
   ・プロフェッショナル・ファーム
   ・NPO、コミュニティビジネスの組織
 4 自営業/ベンチャーからの事業の芽を除外することになっていないか。

 いずれも、どうでもよいことのように思える些細な定義の問題である。しかし、実は、これが重要なのである。
 何故なら、この定義で、中小企業の役割がはっきりするからである。
 例えば、上記の1と2で考えてみよう。

  [資本の独立性]
 独立性に注目することは、中小企業に、大企業が取り仕切る産業に風穴を開けて競争を発生させたり、業際領域で革新的な事業を興して欲しい、と考えていることに他ならない。沈滞する産業に、「喝」の一撃を与える役割を担うのは、もっぱら中小企業と考える訳だ。
 しかし、日本の中小企業の定義には資本の独立性の規定が無いのだから、日本の政治は、この路線を採用していないといえそうだ。
 中小企業が大企業を支援する体制が、日本全体の競争力の向上に繋がると判断しているのかもしれない。それなら、大企業中心の戦略産業毎に、中小企業政策を打ち出す方が自然である。

  [企業規模]
 従業員の数や、資本金の大きさ、で中小企業を一律に眺める発想は理解できない。
 地域にとって重要なのは、雇用者の数と、払ってくれる税金の大きさである。この観点なら、中小企業を特別視する根拠などない。
 少なくとも、貢献が期待できない企業を援助する施策は即刻廃止すべきである。個人の窮乏を助けるのとは違うのである。
 そもそも、同じ機械産業に属していても、東京の小さな町工場と、従業員も多く労働装備率も高い中京圏の系列自動車部品企業を、同じ括りでとらえて、中小企業政策論議して意味ある訳がない。

 ・・・資本の独立性や企業規模の考え方を改めよ、と主張しているのではない。中小企業が、全体のなかで果たす役割をはっきりさせろ、と言いたいのである。

 役割を考えずに、振興策が打ち出されても、その効果は測りようがない。

 → (2004年6月25日)

 政治への発言の目次へ

(C) 1999-2004 RandDManagement.com