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2006.7.13
 
 


不透明な米国大統領選の行方…

 2008年米国の大統領選挙はどうなるか予想もつかない、との論説がWashington Post紙に掲載された。(1)
 ・・・これだけの話なら、つまらぬ記事との印象を抱く人が多いだろう。誰が書こうが、どうせ答えは “It's too early to tell.” なのだから。

 しかし、この記事を採り上げてみたくなったのは、タイトルが“The UFO Hovering Over 2008”と面白かったからである。いかにも、NBC 夜のニュースのアンカーマンを務めていた方が執筆した感じがする。

 ・・・などと語ると、「政局」話や人気度調査結果の話題と勘違いする方も多いかも知れない。日本では、そんなお話大好き人間だらけだから、そう考えるのも無理はない。

 実は、2008年に、誰が大統領に立候補するかなど、どうでもよい。
 一番の問題は、選挙の争点となりそうな最重要問題がはっきりしていないことである。

 言うまでもないが、上手く行っており、争点が見えないのではない。余りに問題が山積しており、何が最重要かはっきりしないのだ。

 ・テロリズム
 ・イラク戦争
 ・原油価格(ガソリン)
 ・環境問題
 ・ヘルスケア
 ・経済

 もっとも、こんなざっくりとしたタイトルでは、現実感が湧くまい。悪夢を並べると、急に現実感が出てくる。

 ・再び9.11並みのテロが襲う。
 ・イラク情勢は悪化の一途で手がつけられなくなる。
 ・イランが核武装化をはたす。
 ・パキスタンにイスラム原理主義政権が誕生する。
 ・原油価格が1バレル100ドルを超える。
 ・ハリケーン“カリーナ”並みの大自然災害が発生する。
 ・鳥インフルエンザ罹患が広がる。
 ・移民問題で暴動がおきる。
 ・住宅バブルが破裂する。
 ・通貨問題で、中国との亀裂が発生する。

 日本人なら、まだ付け加えたいものがあるが、以上の、どれをとっても、ありそうな話だ。残念ながら杞憂の次元とは言えないものばかりだ。これだけ心配事が多岐に渡るのだから、国民共通の関心事項など、あってないようなもの。
 従って、もしも、どこかで火を噴けば、その動きに乗じて、政治の主導権奪取を図る勢力が出てくるのは間違いない。2008年はどうなるかなど予想できる訳がないというのは、確かに正論である。
 流石、元アンカーマンらしい表現方法だ。

 しかし、ここまで問題が山積していると、政治スタイルも変わらざるを得ない気がする。

 従来型の政治手法とは、人種、文化、イデオロギーといった政治地図を見ながら、自らの支持層を設定し、この支持層に応える優先課題の解決策を訴えることで多数派を形成するものだった。しかし、優先課題自体が不透明になってくると、そんなやり方が通用するとは思えない。
 これからは、課題選定ではなく、課題に取り組む姿勢が訴求の核にならざるを得ないのかもしれない。

 と言うより、政治地図の書き換えが必要になってきたと言えそうだ。人種、文化、イデオロギーという見方では、対応しきれなくなったのである。
 例えば、生活が不安定と感じている人にとっては、安定を脅かすものに対して戦う政治を求めるだろう。一方、現状に満足している人達は、真面目に、個々の問題を丹念に解決してくれる政策立案してくれる政治を求める筈だ。
 もちろん、新しい時代を切り拓く、進歩的な政策を求める人達も少なくない。
 問題は、この3者では考え方が違う点にある。

 どこかに軸足をかけて多数派を形成するか、すべての層にそれなりの信頼感を与えるか、思案のしどころである。常識的に考えれば、後者のタイプが勝利する時代に入ったということだろう。
 選挙は政策で戦うべきだが、そう簡単ではないということだ。

 --- 参照 ---
(1) Tom Brokaw: “The UFO Hovering Over 2008”The Washington Post [2006.6.18]
  http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/06/16/AR2006061601558.html


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