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2006.11.15
 
 


どぶろく特区の本質

 2006年9月付「特区における経済効果」報告によると、特区効果は抜群だったらしい。(1)

 一例をあげよう。
 「濁酒製造免許要件の緩和」で年間150万人の観光客増、約67億円の宿泊費等増。

 その一方で、どぶろく特区は頓挫と語る人もいるようだ。確かに、マスコミに頻繁に登場した遠野で、酒類製造業認可は4件しかない。(2)
 これでは、流石に、マスコミも、もちあげる訳にはいかないようだ。“どぶろく”はすでに現地では語られなくなっていると報道している。(3)
 (但し、マスコミ報道のお蔭で、宿泊客の大幅増は実現したから、地域は大満足かもしれない。)

 実際のところ、どの程度かはよくわからぬが、“特区が地方を救う”とは思っていないから、予想通りというところか。
  → 「構造改革特区推進派の正体 」 (2003年3月26日)

 そもそも、どぶろくに関しては「規制緩和」と言っても、特定農業者に対して、酒税法の最低製造数量基準を撤廃するというだけのこと。それ以外は、一切変えないという不思議な制度なのだ。
 当然ながら、稲作農業従事者でない、民宿あるいはレストラン経営者には製造免許は下りない。本格的に民宿経営を進めようと頑張っている人達にはこの制度を利用できないようにしたのである。これがグリーンツーリズムのミソである。
 (そもそも、もとから、お祭りの時に神社でどぶろくを振舞うことは可能。本気で、どぶろくの魅力で産業を興す気があったなら、合法的にやればよいだけのこと。)

 規制緩和を考えるなら、特定地域で、申告納税だけで、少量のどぶろく造りを認めるという方針になりそうなものだが、絶対にそうはさせないという決意が見える「規制緩和」なのである。
 もっとも、自家用酒が増えて、酒市場の縮小でも発生したら大事とでも考えているのかも知れぬが。

 これだけでお分かりだろうと思うが、これは新たな規制を作りだす動きでもある。実に筋が悪い。
 小泉政権は、こんな逆向き施策を「今までにない発想が大切であり、地方の創意工夫、やる気を引き出すことが政治の役割。」(4)と、大いに持ち上げた。
 流石、政治家である。

 これでもピンとこない方もいるかもしれないから、どぶろく特区側の典型的な考え方を紹介しておこう。
 主張は単純。
 「特区を全国に広げないでくれ」というもの。
 全国に広がったら、地域差別化につながらない、という訳だ。
 もちろん、それは受け入れられる。どぶろく特区は限られた事業者への認可だけで終わった。
 これこそ、この施策の本質だ。国の規制を上手く活かして生きていく人達のための、「追加規制」施策なのである。

 しかし、こうなるのも致し方ない。
 今もって規制型産業構造が最善と考えている人が多いからだ。
 従って、今後も、どぶろく規制緩和のような、逆「規制緩和」施策が登場する可能性は高い。

 --- 参照 ---
(1) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kouhyou/060925/siryou.pdf
(2) http://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/16,1952,63,html
(3) http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2006/10/30/tokushu/o1.html
(4) http://www.jimin.jp/jimin/daily/04_07/05/160705b.shtml


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