↑ トップ頁へ

2007.3.14
 
 


歴史認識の話

 未だに、歴史認識の議論が行われている。

 いつまでこんな状態を続けるつもりなのだろうか。

 はっきり言えば、政治家が、細かな「事実」に「思想」をかぶせて、選挙民の感情を揺さぶり支持率をあげようとするから、こんなことになるのである。
 当然ながら、「事実」など水掛け論。「思想」と言っても、日本も他国と同様の姿勢を示すべき、というだけのもので、ほとんど価値はない代物。左も右も全く同じ。

 グローバルに活躍するビジネスマンの、リアリズムに徹した発想とは相当な格差がある。

 と言っても、よくわからないかも知れない。ビジネスマンはこうした問題に関しては発言しないからである。
 簡単にまとめておこう。

 先ず、第二次世界大戦後の日本の繁栄を考えると分かり易い。
 2大軍事大国対立の時代のなかで、米国は日本を取り込むことに決め、日本も米国に力を貸すことにした。この認識が出発点である。
 米国は軍事産業に注力するかわりに、消費財産業は日本に任せ、日本は米国の農産物を輸入する体制を敷く。これで経済を発展させ、ソ連圏に対抗したのである。日米間の貿易摩擦は生じたが、米国は、マクロで見れば、国内の消費財産業の保護など眼中になかったと言える。
 それだけではない。
 生産性が高い最新設備を投入できる、後発が優位に立てるチャンスがある鉄鋼のような産業も放置した。

 米国にとっては結構な犠牲だと思うが、それを支払ってもお釣りがくる位、日米同盟は重要だったということだ。

 ただ、それには自明な前提条件があった。
  ・日本が軍事産業に直接乗り出さないこと
  ・資本主義経済の血流である世界の金融体制には手出しをしないこと
  ・世界のエネルギー資源分割体制に口を出さないこと

 この不文律を守っている限りは、日本の繁栄を約束してくれたいうことだ。いわゆる平和勢力の運動も、反米であっても、この不文律維持にプラスに働き、親ソでない限りは、米国も容認していた筈である。
 ともあれ、日米軍事/経済同盟関係は、ソ連に対抗するための最重要手段だったのである。

 例えば、日本のカメラ産業は、軍事技術に走らないことを好感され、ユダヤ系流通の後押しを得て、ドイツのカメラ産業を凌駕したと見ることもできる。日本と違い、ドイツは、米国市場で受け入れてもらうには、反ナチの姿勢をはっきりさせる必要があったが、日本はそんな必要ななかったのである。
 しかし、米国は日本びいきな訳ではない。
 ソ連圏に軍事技術を輸出するような日本企業に対しては、容赦ない鉄槌を下すし、世界の金融を揺るがしかねない日本の金融機関に対しては徹底的に叩く。

 歴史認識を踏まえていれば、こんな姿勢は予測できる筈である。

 ともあれ、米国から見れば、日米同盟は大成功だったといえよう。
 中国の変化を引き起こしたし、ソ連の壊滅に繋がる決め手になったと見ることさえできる。なにせ、ソ連は、軍事産業に傾注したが、非軍事産業を担う主体を欠くため、経済が低迷。大資源国でありながら、エネルギー開発技術に注力できず、最後は軍事技術開発へ回す原資さえ不足してしまい、自滅したのである。

 問題は、この同盟関係が、米国にとって、今後も必要と言えるかだ。
 日本経済を考えると、この同盟関係が無くなると一大事である。国内の改革を避け続け、古い仕組みを温存し続けてきたからだ。中国への投資や、輸出にしても、ほとんどは米国市場向けだと思われる。従って、円高になったり、米国との経済摩擦が発生したら、日本経済はたちどころに不調に陥ること間違いなし。
 日本の株式市場が米国の株式市場に連動するのは当たり前だ。

 この状態を知っていたら、日本がどう映るか考えてみるとよい。
 日本は、米国とロシアあるいは中国との軍事対立を煽って日米同盟関係を強化しようと動き始めている、と見られて、おかしくないのである。

 これを踏まえると、第二次世界大戦頃の日本の行動を、欧米が何時までも問題にする理由も見えてくる。
 第二次世界大戦後の日本は、消費財輸出を原動力とする国家だった。資源国家でないのだから、対ソ連でそれ以上の役割を担える力はなかったからである。
 それでは、第二次世界大戦前の日本はどうだったか。
 競争力がある産業などなかったのが実情だろう。農耕地も不足、鉱物資源もなく、工業は欧米の二番煎じでしかない。あるのは、労働力。
 もっとも、競争力を有する産業はあった。軍事産業である。おそらく、この産業の技術力は相当なものだった筈。
 しかし、これだけで大国化を目指したのである。ここが日本の特異性である。
 植民地経営を目指した点では、欧米も同じだ。しかし、経済構造は全く違う。大国化の基盤などほとんどないのに、軍事力だけで、大国化を図ったのだ。

 どう映るかは、解説するまでもなかろう。
 帝国主義的政策を進めたという点では大同小異と言えないことはないが、日本だけが嫌われる理由はここにある。


 政治への発言の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2007 RandDManagement.com