→表紙
2014.1.7
 
 

常識的には自公連立解消だが…

安倍首相靖国神社参拝へのコメントが出揃った感じがする。それらの一部に、一寸目を通しただけにすぎぬが、ステレオタイプなものが多そうな印象。
一昔なら、国粋主義者の極論とされ無視された類のものが多くなったという変化は見て取れるが、それこそ、20年前となんら変わらないような意見だらけでは。
思想的劣化がかなり進んでしまったとは言えまいか。

これは、小泉首相時代の話とは違うからである。
当時の米国は、自他共に認める、世界の覇権国。
その傘の下で、同盟国として最大限協力したのが小泉政権。従来の日本政府の姿勢を突き破った政権だった。従って、米国政権からしてみれば、中国が反撥する靖国神社参拝には大反対だが、まあ黙認するしかなかろうといったところ。
それですんだ訳である。

おわかりだと思うが、今や、そんな状況ではなかろう。

先ず、世界的に、米国の影響力は失われつつある点に注意を払うべきである。すでに中東での存在感は急速に薄れつつあるが、その風潮が他にも広がっていると見てよいのでは。
そうしたなかでの、安倍政権の動きである。
それは、オバマ政権が考えていそうな東アジア安定の枠組みとは相容れないもの。
つまり、米国の影響力は日本政府にも及ばなくなったことを、全世界に示した訳である。東アジアにおける米国の零落現象として位置付けられることになる。
従って、オバマ政権としては、靖国神社参拝黙認は難しかろう。米国の姿勢が、安倍首相によって変更を余儀なくされたように映るからだ。指導力無き、弱い米国イメージができあがりかねない訳だ。
そういう事態になれば、この先、日米関係が上手く回ることはなかろう。安倍政権は、そんなことは百も承知の上で、こうした動きに出た訳である。

ただ、オバマ政権の東アジア基本戦略と言ったところで、たいしたものではなさそう。実利をとりながら、紛争にはなるたけかかわらずという以上ではなかろう。要するに、第一義は中国市場へのアクセス確保で、残りはそれの補完事項といったところだろう。それがよくわかるのが、北朝鮮問題。とりあえず先送りというにすぎず、中国に丸投げ。従って、尖閣についても、米中間の軍事的境界線を人民解放軍が勝手に弄るなという以上の主張ではない。それを、日本向けに、日米軍事同盟上の問題と呼んでいるにすぎまい。

換言すれば、米国は、東アジア安全保障に本気でコミットする気は無い可能性が高いということ。と言っても、大きな変化はこまるので、すべてをできるだけ現状維持でということになる。そこには原則論など皆無だから鵺的に動くしかない。・・・それぞれの国は、米国の方針を勝手に解釈して動くことになる。当然、問題が発生する訳だが、米国は場当たり的に動くだけ。
この状態で、地域の安定性が今迄通り維持できると考えるのは夢物語に近かろう。

そういうなかで、オバマ政権の対日方針とは、できる限り日本に安全保障費用を負担させ、自衛隊を地域安定に活用することでは。誰が見ても、米軍のコミットメントを減らそうとの動き。それこそが、オバマ流プラグマティズムの本質かも知れぬ。
日本が、その流れにあわせようとすれば、軍事同盟を締結している以上、秘密保護法や集団自衛権の話が浮かんでくるのは必然と言えよう。換言すれば、東アジアから暫時撤退していく米軍の穴を日本の軍事力とカネで上手く埋めていこうという考えに乗せられていることになる。

問題は、それに乗るだけでよいのかということ。
安全保障を図るには、他に手は無いのか。何が一番かを考え抜く必要があろう。
特に、朝鮮半島有事は近い将来と考え、それにどう対処すべきかはっきりさせておかねば。・・・北朝鮮は自ら経済状況を打開する能力を喪失してしまった以上、国体護持のための選択肢は開戦に打って出ることしかなくなってしまったからだ。当たり前だが、ことあれば日本が頼れるのは米軍しかないのである。しかし、その力を当てにするために、集団自衛権に踏み込めば戦争に巻き込まれることになる。避けることは不可能である。

ここまで来てしまうと、平和主義を掲げてきた公明党のこと、流石に、集団自衛権路線に乗る訳にはいくまい。といって、安全保障を担保する政策については曖昧模糊とした発言しかできない政党だから、代替案もなかろう。スローガンを温存させたいなら、連立解消しか手はないのでは。
もっとも、オバマ路線に従う以外に手は無さそうだと見て、社会保障費の大盤振る舞いが最優先される限り、連立政権を続ける可能性も高そうな気はするが。


 政治への発言の目次へ>>>    表紙へ>>>
 
(C) 2014 RandDManagement.com