■■■■■ 2011.2.22 ■■■■■

 コンピュータは予想通りのスピードで人間の脳に近づいてきた。

 いよいよ来るべきものが来たという感じがする。

 "チェスではコンピュータが人間の能力を凌駕しており、この力が3桁上昇すれば人間の脳と同等なレベルに達する。技術の進歩が加速度的であるのは事実だから、現状から未来に外挿すれば、2025年頃には、そのレベルが実現されることになる。"と書いたのはかれこれ10年前のこと。
    「Kurzweilの予想」 [2001.11.6]
 最近の動きを見ていると、シナリオ通りに進みそうである。

 その1は将棋。

 2010年10月11日、ついにコンピューター将棋ソフトが清水市代女流王将を破った。長考で終盤の戦いで時間がとれずコンピュータの力に負けたとされているが、棋譜を眺めると完敗に映る。(素人なので間違っているかも。)
 ただ、棋士は強いものだとの印象も残った。
 コンピュータの処理能力増強は日進月歩であるにもかかわらず、まだまだ十分勝負になるからだ。おそらくコンピュータプログラムには欠点がある筈で、それを研究して突くような指手を打ち出せば人が勝つチャンスはありそう。しかし、それを防ぐ手立てを用意していたのが秀逸。
 4種類のプログラムを同時に走らせ、計算の結果を重み付けで選択するという手を使っているのだ。こうなると、特徴がわからなくなり、欠点を探るのはえらく難しいだろう。
 ともあれ、ここまでくれば、数年後には、コンピュータに勝てる棋士はいなくなるのではなかろうか。

 その2はリアルタイムストラテジー・コンピューターゲーム("StarCraft")。

 コンピューターゲームには、プロのゲーマーがいる位で、ゲーム自体が複雑にできているから、対戦パターンを覚えれば相手に勝てるようなものではない。ところが、2010年最優秀とされたUC Berkeleyの"Overmind"がヨーロッパのトッププレイヤーに勝ったという。人工知能はそこまできたのである。

 その3はクイズ。こちらは、将棋やコンピュータゲームとは質が違う。

 2011年2月17日、IBMの"Watson"がクイズ番組でチャンピオンと対戦し、結局、大差をつけて勝利したのである。これには流石に驚いた。
 インターネット接続せず、人間と同じ条件で問題を聞いて、自然言語で回答しての完勝だからだ。言葉は曖昧である上、ルールが明瞭なゲームとは違い質問内容は構造的に明確とは言いがたい。知識データベースと照合して答えを探るといっても、対象範囲を決めることも簡単ではなかろう。にもかかわらず、その困難性をのりこえたのである。こんなことができるのは、どう考えても、機械が時間をかけて学習したということ。凄い。
 ちなみにハードの方だが、冷蔵庫大のラック10台。2,880個のCPU(コア)に15TBの主メモリが搭載され、Linuxが走る。理論処理能力は80TFlops。ビルの一室に設置したところで違和感があるような機械ではない。印象からすれば、商用マシンの風体。
    "IBM Watson" (C) IBM

 この手のコンピュータがそのうち至る所に現れることになるのではなかろうか。
 そうなると、なまじっか分析能力があるとか、知識豊富といった専門家はその ポジションを機械に譲らざるを得なくなる。これは大事。
 特に、様々な臨床データに基づく推論で病気の診断と治療を行っている医師の世界では、患者が"Watson"博士の方が信頼できると言い出しかねまい。。そんな状況を引き起こす製品の上市が、タイムライン上に乗ってもおかしくない時代に突入した訳である。

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