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2003.2.22
 
 


Creyスパコンの復活…

 2003年2月、CrayがスーパーコンピュータX1システムを米国政府から6200万ドルで受注したと発表した。2002年末のベクター型スパコン販売再開を受けた、米国政府の支援策と見ることもできよう。 (http://www.cray.com/news/0302/62m_x1.html)

 70年代のスパコンは、今のラップトップとたいして性能は変わらないが、当時は驚く程の能力だった。この先頭にいたのがCrayである。
 Crayは、データをメモリーから逐次呼び出すのが速度向上のボトルネックになっているとの判断から、ベクター処理の仕組みを取り入れ、大成功を納めた。
 しかし、その後、コンピュータ開発の主流は非ベクターとなり、ベクター技術ほとんど忘れ去られた。
 といっても、それは米国の話しだ。日本のコンピュータメーカーは、ベクター型の高速コンピュータ開発を続けた。

 こうした努力は、NECが世界最高速のEarthSimulatorを開発したことで、ついに実った。世界最高速。しかも、2位以下とは比較すべくもない、格段の能力を発揮したのである。
 このため、科学技術のリーダーを自負する米国に衝撃が走った。ソ連のスプートニク同様のインパクト、と語る人もいた位である。

 当然、アポロプロジェクト同様、ベクター型の展開が必要になる。ところが、その技術を受け継ぐ企業は、かつてのCrayしかない。
 その結果が、X1モデルである。

 これを機に、米国のコンピュータサイエンス分野では、パラレル型のコンピュータへの過度の集中への反省感が生まれているようだ。
 といっても、X1モデルも、クラスターに馴れている研究者に使い易いモデルとされており、流れが大きく変わる兆候がある訳ではない。
 しかも、EarthSimulatorの能力そのものは素晴らしいが、価格が極めて高いし、施設が巨大だから、実質的なパフォーマンスを考えると、それほどのインパクトではない、との負け惜しみ的な声もあがっている。ベクターへ潮流が変わるとは思えない。

 しかし、EarthSimulatorの利用者側の話しが伝わるにつれて、多少、状況が変わりつつあるようだ。パラレル型プログラムは面倒だが、ベクター型は古典的なフォートラン同様の使い易さ、と話す人が現われ始めたからだ。パラレル型の良さを否定しかねない感想が伝わり、コンピュータ研究者も再考し始めたようだ。

 コンピュータのコストは、ハードよりソフトが大きく占める時代である。ソフトの生産性が高い仕組みなら、そのコストパフォーマンスはとてつもない価値を生む可能性がある。
 ベクター型はプログラムが独特であるから、汎用性に欠ける。専用の半導体開発も面倒だ。従って、発展性には限界があるとされきたのである。
 ところが、実際はそうでないなら、パラレル型が転回点にさしかかっていることを意味する。考え時なのである。
 従って、X1モデルは、ソフトの生産性や、応用拡大の容易性が再検討される場となるともいえよう。

 ハードやソフトの再検討もさることながら、コンピュータ利用の仕組みも再検討されるだろう。

 EarthSimulatorは科学者に広く公開されているため、利用者の経験談が伝わり易いようだ。独特のソフトでも、オープンならスキルは利用者に広がる。このため、ソフト開発の生産性は向上する可能性が高い。スーパーコンピュータ開発には、オープン環境による利用者コミュニティ形成が重要との見方が浮上しているのだ。

   過去記載の
   ・「大学のスパコン研究の実力向上」へ
 (200206)
   ・「ベクタースパコンのインパクト」へ
 (200206)
   ・「先端スーパーコンピュータ競争(2)」へ
 (200108)
   ・「先端スーパーコンピュータ競争(1)」へ
 (200108)
   ・「ベクトル型スーパーコンピュータ分野での独占的地位」へ
 (200103)
   ・「高速コンピュータ処理技術の力量」へ
 (200003)


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